語呂合わせのバリューセット”高齢患者管理のミカタ” 〜NPでの学びを看護に繋げる〜
入院患者の〇〇シリーズ。
前回は高齢者のせん妄についてまとめましたが、主疾患の疾患管理をしながら、それらリスク管理をしながら、高齢者診療で考えなければいけないことは多岐にわたります。
そんな中、前回のまとめでも出てきた”語呂合わせ”
この語呂合わせを用い、入院時の評価や定期的なショートサマリー記載時などに振り返ることで、より多角的に患者を捉え、疾患だけにとらわれない必要な介入が提供できるかと思います。
今回は総合診療科NPが臨床で学び、日頃用いている”高齢患者管理に使える語呂合わせ”についてまとめたいと思います。
老年医療の5Ms
高齢者診療を学ぼうとすると、必ずと言っていいほど出てくるのが””高齢医療の 5Ms”です。
多くの慢性疾患を抱え、身体的にも精神的にも障害を持つ高齢者を診療するためには、何かに囚われるではなく、全体を俯瞰し、ケアにあたる必要があります。
The GERIATRIC 5Ms – the 5 simple words every geriatrician needs to know (the new mantra)britishgeriatricssociety.wordpress.com
・Mind/Mental:認知機能は保たれているか?せん妄・抑うつになっていないか?など
・Mobility(機能障害、歩行障害、転倒):活動性は保たれているか?維持・向上できるか?
・Medication(ポリファーマシー、薬剤有害事象):ポリファーマシー、有害事象は?処方の適正化はなされているか?
・Multi complex(複雑症例、多併存疾患):身体的、社会的に複雑な症例ではないか?多疾患併存、SDHなど
・Matteers most(ゴールの設定、ACP):やっていることに意味はあるのか?患者家族のためになっているか?患者家族の意向とそれに沿った医療目標は?
DEEP-IN
5Msで評価した後、具体的なアクションプランにするために用いるのがDEEP-IN
これで迅速評価を行うことで、ざっくりとした問題点が抽出され、ファーストステップを踏み出すことが可能になります。
Key Word
D:認知症(HDS-R,MMSE)、抑うつ(PHQ-2、PHQ-9)、薬剤(抗コリン薬、降圧薬、糖尿病薬、新規薬剤、飲み忘れ、中止薬等)
せん妄
EE :眼鏡(老眼鏡含む)は持参しているか、矯正されているか、日常生活に支障はないか
補聴器(電池含む)、耳垢、
P :歩行補助具(杖、歩行器、車椅子)、過去一年の転倒歴。起立時•歩行時のふらつきの自覚。
I :リハビリパンツの着用 失禁エピソード
N :体重の変化 食事量の変化、衣類のフィット感、ベルト穴も有効
DEATH /SHAFT
ADL(日常生活動作):普段の生活の中で行っている行為や行動
IADL(手段的日常生活動作):ADLを元にした社会生活上の複雑な動作
この日常生活動作と、社会生活動作の確認を行います。
D:Dressing 着替えが1人でできるか
E:Eating 食事摂取は1人で可能か 介助は必要か 食事形態は?
A:Ambulating 歩行は可能か?屋外は?自助具の必要性
T:Toileting トイレは自立しているか?失禁の有無
H:Hygiene 入浴はどうしているか?歯磨き、義歯の管理
S:Shopping 買い物で困ることはないか
H:Housekeeping 掃除は1人でできているか
A:Accounting 金銭管理で困ることはないかj
F:Food preparation 食事の準備は1人でできるか
T:Transport 公共の交通機関を利用できているか
BATTED
同じADLの評価ですが、DEATH /SHAFTが入院時スクリーニングとすれば、BATTEDは入院中の定期的な確認事項として活用しています。
入院時と比較して、それぞれの項目がどのように変化しているか?介入の余地がないかなど評価します。
OLD MEDiCINE
DEATH /SHAFT同様入院中のスクリーニングを定期的に行います。
緊急入院や疾患の状況によって、視野が狭くなり、漫然と続いている点滴やモニタリング、絶食指示の継続など少なくありません。またせん妄につながる拘束や視覚聴覚・排泄に対しても敵的に評価が行えるよう、意識的にOLD MEDiCINEの項目で評価を行います。
と簡単にまとめましたが、高齢者は特に俯瞰的に捉えることは重要であり、主疾患は改善したのに活動性は低下した、、、せん妄になった、、、ということも珍しくありません。
先人たちが提案してくださった”語呂合わせ”をうまく活用し、臨床でのケアにつなげて行けたら幸いです。
本日の参考書